注染について

注染について

注染(ちゅうせん)とは、絵柄を切り抜いた形紙を折り重ねた生地に当て、防染糊を付けた上から染料をそそぎ染めていく伝統的な染色技法です。
その歴史は、明治36年、大阪立売堀「はり久」染工場の五代目松井元治郎氏が、手拭染からヒントを得て初めて注染中形をつくり、第五回内国勧業博覧会に出品して入賞したのをきっかけに、明治の末年から大正にかけて発展しました。
時代の変化とともに大量生産を目的にプリントによる方法が主流になりましたが、ぼかしや風合い、裏表のない仕上がりは注染でしか表現できません。
今日も染色技術や染料、生地などが発展し、さまざまな手ぬぐいや浴衣が染められています。

注染の工程

染色の前に、まずは生地と形紙を用意します。

和晒

晒とは、織りあがった生地原布を精練して漂白する工程です。
和晒では約40時間ほどの時間をかけてゆっくり精練するため自然の防縮加工が施されます。ゆかたの染下晒は絶対にこの加工でなければなりません。
生地にストレスをかけないため、生地に毛羽立ちが残り、糸が無理やり引っ張られたりしていないので、多くの空気を含んだ柔らかい生地に仕上がります。

形紙切り

伊勢形紙は、柄や文様を生地に染めるために用いるもので、千年余りの歴史を誇ります。昭和58年に経済産業大臣により指定された「伝統的工芸用品(用具)」です。柿渋を用いて和紙を貼り合わせた丈夫な紙に、細かい刃先の彫刻刀で着物の文様等を丹念に彫り抜いたもので、形紙を作るには高度な技術と熟練の技が必要です。

1

地巻き

織り上がった生地は、晒工場より入った生地を均染浸透剤を加えた水で洗い、脱水の後乾燥させることで、生地の浸透および均染性をよくします。板場の職人が作業し易いようにシワを伸ばしながら1反~2反に丸巻き状にします。

2

形置き(板場)

生地の上に形紙を置き、糊付けを行います。形紙の長さは90~100㎝ほどで、糊を塗っては生地を折り返しを繰り返し、蛇腹状に折りたたみます。
糊のついたところは上から染料をかけてもその部分が染まらないため、糊の無い部分が柄として染色されます。
この形置き、糊付け作業をする職人を「板場」といいます。

3

染色(壷人)

染料をドビン(ジョウロのようなもの)で注いで生地を染めます。台の下から空気を抜くことで、染料を下まで浸透させ柄の部分を染め上げます。
注染の仕事もただドビンで染料を注ぐだけではきれいに柄が染められず、染料の特性を熟知し、そそぐ量や浸透させるタイミング等熟練の知識が必要になります。この職人を「壺人(つぼんど)」といいます。

4

水洗い(浜方)

染料を十分に注いで染め上った生地は水洗い場に運ばれます。水で何度も洗ううちに防染部分についている糊が落ち、生地の色が出て、柄の部分も余分な染料が洗われ柄が浮き出すようにきれいになります。
水洗い場は川のような細長いプールで、豊富な水量を使い水洗いします。
この職人を「浜方」といいます。

5

天日干し

脱水したあと、7mもの高さの干し場に広げて乾燥させます。空気に当てて乾燥させることで、染料の色はますます美しくなり、布地に定着します。
染めあがった反物は、しわを伸ばして整理されたあと、カットして手ぬぐいに、縫製して浴衣に仕立てられます。